2026/05/01 Fri 【1080・第1話】YouTuber(s) #小説・パラレル 「あいつ、なんかやばい」 「義兄弟が現代に転生したら」を(ガチで)ふみちゃんと考えてみた →マジで書いてみた、という暴走の産物です。 続きを読む・ 昼のピークを少し過ぎた店内は、程よくざわついていた。 壁の時計は午後二時を指している。カウンター席には遅めの昼食をとるサラリーマン。窓際では制服姿の高校生が笑い合う。来店を告げる電子音。香ばしいポテト臭。いつものマックだ。 そんなことを思いながら、ハンバーガーの包み紙を開く。新発売のサムライマック。分厚いパテに炙り醤油風のソースがやみつきになる一品。そんな謳い文句を思い出しながら、まずは一口。なるほど、これは当たりだ。 一気に半分まで平らげ、そこで顔を上げた。声がしたからだ。 「まじで」 向かいでスマホを睨んでいた彩八だった。 「どうした」 「コメントやばい」 「何が」 「伸び過ぎ」 「バズってんだな」 案の定、彩八は口の端を上げて、画面を向けてくる。その周りでネイルが輝く。根元は真紅、先端はピンクのグラデーション。新作だな、と思いながら、画面に視線を移す。 「確かにやべえな」 「でしょう。ちなみに一番多いのは「編集えぐい」。つまり私のおかげ」 「はいはい。いつもご苦労さま」 労いながらポテトをつまむ。ふにゃっとした食感に程よい塩味。いつものポテトだ。 咀嚼しながら、改めて店内を見やる。何もかも、いつも通り。平穏な日常。 ーのはずだった。 ふと、視線が止まる。窓際の席に座っている、一人の男。 歳は二十代前半か。黒のスウェットの上下に白いスニーカー。顔立ちが整っていて、GUのチラシのようだ。 トレイの上にはチーズバーガーとポテトとドリンク。カップに透ける色は緑。ファンタメロンだろう。 バーガーとドリンクはほとんど手つかずで、ポテトだけが減っている。残りを一本つまんで、口に入れ、噛んで飲み込む。それだけの動作が、妙に目についた。 ー何だろ、あいつ。 食べ方は偏っているが、それ以外は普通だ。よくいる客。 ーなのに、目が離せない。 ポテトをつまみながら、男は店内を見ている。その視線を追って、戸惑う。どこを見ているのか、分からない。顔はカウンターに「向いている」が、そこを「見ている」感じがしない。 さらに目を凝らすと、違和感が増した。視線の通った辺りに、目が眩んだときのように、黒く小さな点が散って見えた。 視線が高校生のグループに移る。そこでも同じだ。 ー何か、気持ち悪い。 嫌な感じがする。理由は分からない。だが見ていると、胸がざわつく。 ー何だこれ。 知らない感覚だった。自分は昔から「ヤバいもの」が分かる。人間だったり、場所だったり。目つきや空気、そういうものに「出る」からだ。 だが今回は違う。「ヤバい」のかは分からない。だが引っ掛かる。視線を外したい。だが外すとまずい気もする。 男の視線が移る。自分達の方に。気づけば身体が動いていた。椅子を押し、少し後ろにずれる。男と彩八の間に割り込むように。 「どうかした?」 彩八の声で、我に返る。 「あ、いや」 「全然減ってない」 彩八が自分のトレイを指す。バーガーもポテトも、まだ半分ほど残っている。対して彩八のトレイは、空き箱と包み紙だけだ。 「どうかしたよね」 改めて彩八に促され、顎で窓際を示す。 「いや、あれ」 「どれ」 彩八が視線を向ける。 「ポテトばっか食ってるやつ」 「いるね。黒のスウェット」 頷くと、彩八はじっと男を見て。 「別に、フツーじゃない?」 「そうか?」 「ポテト先なんだ、とは思うけど、それだけ」 そうかもしれない。そう思うのに、胸騒ぎが消えない。 やがて男が立ち上がった。トレイを持ってゴミ箱に向かい、ポテトの空箱と、ほとんど手つかずのバーガーとドリンクをまとめて一つの口に押し込む。その様子に、彩八が顔を顰めた。 「何あれ」 彩八は行儀の悪い奴が嫌いだ。食べ物を粗末にする奴は、もっと嫌いだ。 「せめて分けろよ」 吐き捨て、睨む。男は気づく様子もなく、自動ドアを抜け、人混みに紛れて姿を消した。そこでようやく、息を吐いた。ずっと止めていたらしい。深く吸い、吐き、を繰り返す。 喉がやけに乾いていた。コーラを手に取り、一気に流し込む。炭酸は抜け、氷も溶けている。薄くて温い。だが気にならない。 無心でコーラを啜る自分に、彩八が首を傾げる。スマホの回りでネイルが光る。根元に沈む深い赤が、先ほどより少しだけ、不穏に見えた。畳む
「あいつ、なんかやばい」
「義兄弟が現代に転生したら」を(ガチで)ふみちゃんと考えてみた
→マジで書いてみた、という暴走の産物です。
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昼のピークを少し過ぎた店内は、程よくざわついていた。
壁の時計は午後二時を指している。カウンター席には遅めの昼食をとるサラリーマン。窓際では制服姿の高校生が笑い合う。来店を告げる電子音。香ばしいポテト臭。いつものマックだ。
そんなことを思いながら、ハンバーガーの包み紙を開く。新発売のサムライマック。分厚いパテに炙り醤油風のソースがやみつきになる一品。そんな謳い文句を思い出しながら、まずは一口。なるほど、これは当たりだ。
一気に半分まで平らげ、そこで顔を上げた。声がしたからだ。
「まじで」
向かいでスマホを睨んでいた彩八だった。
「どうした」
「コメントやばい」
「何が」
「伸び過ぎ」
「バズってんだな」
案の定、彩八は口の端を上げて、画面を向けてくる。その周りでネイルが輝く。根元は真紅、先端はピンクのグラデーション。新作だな、と思いながら、画面に視線を移す。
「確かにやべえな」
「でしょう。ちなみに一番多いのは「編集えぐい」。つまり私のおかげ」
「はいはい。いつもご苦労さま」
労いながらポテトをつまむ。ふにゃっとした食感に程よい塩味。いつものポテトだ。
咀嚼しながら、改めて店内を見やる。何もかも、いつも通り。平穏な日常。
ーのはずだった。
ふと、視線が止まる。窓際の席に座っている、一人の男。
歳は二十代前半か。黒のスウェットの上下に白いスニーカー。顔立ちが整っていて、GUのチラシのようだ。
トレイの上にはチーズバーガーとポテトとドリンク。カップに透ける色は緑。ファンタメロンだろう。
バーガーとドリンクはほとんど手つかずで、ポテトだけが減っている。残りを一本つまんで、口に入れ、噛んで飲み込む。それだけの動作が、妙に目についた。
ー何だろ、あいつ。
食べ方は偏っているが、それ以外は普通だ。よくいる客。
ーなのに、目が離せない。
ポテトをつまみながら、男は店内を見ている。その視線を追って、戸惑う。どこを見ているのか、分からない。顔はカウンターに「向いている」が、そこを「見ている」感じがしない。
さらに目を凝らすと、違和感が増した。視線の通った辺りに、目が眩んだときのように、黒く小さな点が散って見えた。
視線が高校生のグループに移る。そこでも同じだ。
ー何か、気持ち悪い。
嫌な感じがする。理由は分からない。だが見ていると、胸がざわつく。
ー何だこれ。
知らない感覚だった。自分は昔から「ヤバいもの」が分かる。人間だったり、場所だったり。目つきや空気、そういうものに「出る」からだ。
だが今回は違う。「ヤバい」のかは分からない。だが引っ掛かる。視線を外したい。だが外すとまずい気もする。
男の視線が移る。自分達の方に。気づけば身体が動いていた。椅子を押し、少し後ろにずれる。男と彩八の間に割り込むように。
「どうかした?」
彩八の声で、我に返る。
「あ、いや」
「全然減ってない」
彩八が自分のトレイを指す。バーガーもポテトも、まだ半分ほど残っている。対して彩八のトレイは、空き箱と包み紙だけだ。
「どうかしたよね」
改めて彩八に促され、顎で窓際を示す。
「いや、あれ」
「どれ」
彩八が視線を向ける。
「ポテトばっか食ってるやつ」
「いるね。黒のスウェット」
頷くと、彩八はじっと男を見て。
「別に、フツーじゃない?」
「そうか?」
「ポテト先なんだ、とは思うけど、それだけ」
そうかもしれない。そう思うのに、胸騒ぎが消えない。
やがて男が立ち上がった。トレイを持ってゴミ箱に向かい、ポテトの空箱と、ほとんど手つかずのバーガーとドリンクをまとめて一つの口に押し込む。その様子に、彩八が顔を顰めた。
「何あれ」
彩八は行儀の悪い奴が嫌いだ。食べ物を粗末にする奴は、もっと嫌いだ。
「せめて分けろよ」
吐き捨て、睨む。男は気づく様子もなく、自動ドアを抜け、人混みに紛れて姿を消した。そこでようやく、息を吐いた。ずっと止めていたらしい。深く吸い、吐き、を繰り返す。
喉がやけに乾いていた。コーラを手に取り、一気に流し込む。炭酸は抜け、氷も溶けている。薄くて温い。だが気にならない。
無心でコーラを啜る自分に、彩八が首を傾げる。スマホの回りでネイルが光る。根元に沈む深い赤が、先ほどより少しだけ、不穏に見えた。畳む