まぼろし

イクサガミの二次創作をしています

【1080・第1話】YouTuber(s) #小説・パラレル

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「あいつ、なんかやばい」
「義兄弟が現代に転生したら」を(ガチで)ふみちゃんと考えてみた
→マジで書いてみた、という暴走の産物です。



 昼のピークを少し過ぎた店内は、程よくざわついていた。
 壁の時計は午後二時を指している。カウンター席には遅めの昼食をとるサラリーマン。窓際では制服姿の高校生が笑い合う。来店を告げる電子音。香ばしいポテト臭。いつものマックだ。
 そんなことを思いながら、ハンバーガーの包み紙を開く。新発売のサムライマック。分厚いパテに炙り醤油風のソースがやみつきになる一品。そんな謳い文句を思い出しながら、まずは一口。なるほど、これは当たりだ。
 一気に半分まで平らげ、そこで顔を上げた。声がしたからだ。
「まじで」
 向かいでスマホを睨んでいた彩八だった。
「どうした」
「コメントやばい」
「何が」
「伸び過ぎ」
「バズってんだな」
 案の定、彩八は口の端を上げて、画面を向けてくる。その周りでネイルが輝く。根元は真紅、先端はピンクのグラデーション。新作だな、と思いながら、画面に視線を移す。
「確かにやべえな」
「でしょう。ちなみに一番多いのは「編集えぐい」。つまり私のおかげ」
「はいはい。いつもご苦労さま」
 労いながらポテトをつまむ。ふにゃっとした食感に程よい塩味。いつものポテトだ。
 咀嚼しながら、改めて店内を見やる。何もかも、いつも通り。平穏な日常。
ーのはずだった。
 ふと、視線が止まる。窓際の席に座っている、一人の男。
 歳は二十代前半か。黒のスウェットの上下に白いスニーカー。顔立ちが整っていて、GUのチラシのようだ。
 トレイの上にはチーズバーガーとポテトとドリンク。カップに透ける色は緑。ファンタメロンだろう。
 バーガーとドリンクはほとんど手つかずで、ポテトだけが減っている。残りを一本つまんで、口に入れ、噛んで飲み込む。それだけの動作が、妙に目についた。
ー何だろ、あいつ。
 食べ方は偏っているが、それ以外は普通だ。よくいる客。
ーなのに、目が離せない。
 ポテトをつまみながら、男は店内を見ている。その視線を追って、戸惑う。どこを見ているのか、分からない。顔はカウンターに「向いている」が、そこを「見ている」感じがしない。
 さらに目を凝らすと、違和感が増した。視線の通った辺りに、目が眩んだときのように、黒く小さな点が散って見えた。
 視線が高校生のグループに移る。そこでも同じだ。
ー何か、気持ち悪い。
 嫌な感じがする。理由は分からない。だが見ていると、胸がざわつく。
ー何だこれ。
 知らない感覚だった。自分は昔から「ヤバいもの」が分かる。人間だったり、場所だったり。目つきや空気、そういうものに「出る」からだ。
 だが今回は違う。「ヤバい」のかは分からない。だが引っ掛かる。視線を外したい。だが外すとまずい気もする。
 男の視線が移る。自分達の方に。気づけば身体が動いていた。椅子を押し、少し後ろにずれる。男と彩八の間に割り込むように。
「どうかした?」
 彩八の声で、我に返る。
「あ、いや」
「全然減ってない」
 彩八が自分のトレイを指す。バーガーもポテトも、まだ半分ほど残っている。対して彩八のトレイは、空き箱と包み紙だけだ。
「どうかしたよね」
 改めて彩八に促され、顎で窓際を示す。
「いや、あれ」
「どれ」
 彩八が視線を向ける。
「ポテトばっか食ってるやつ」
「いるね。黒のスウェット」
 頷くと、彩八はじっと男を見て。
「別に、フツーじゃない?」
「そうか?」
「ポテト先なんだ、とは思うけど、それだけ」
 そうかもしれない。そう思うのに、胸騒ぎが消えない。
 やがて男が立ち上がった。トレイを持ってゴミ箱に向かい、ポテトの空箱と、ほとんど手つかずのバーガーとドリンクをまとめて一つの口に押し込む。その様子に、彩八が顔を顰めた。
「何あれ」
 彩八は行儀の悪い奴が嫌いだ。食べ物を粗末にする奴は、もっと嫌いだ。
「せめて分けろよ」
 吐き捨て、睨む。男は気づく様子もなく、自動ドアを抜け、人混みに紛れて姿を消した。そこでようやく、息を吐いた。ずっと止めていたらしい。深く吸い、吐き、を繰り返す。
 喉がやけに乾いていた。コーラを手に取り、一気に流し込む。炭酸は抜け、氷も溶けている。薄くて温い。だが気にならない。
 無心でコーラを啜る自分に、彩八が首を傾げる。スマホの回りでネイルが光る。根元に沈む深い赤が、先ほどより少しだけ、不穏に見えた。畳む